障害者雇用は、法定雇用率を満たすためだけに進めるものではありません。採用後に能力を発揮できる職務を用意し、合理的配慮を提供し、定着まで支援する設計が必要です。
2026年5月11日時点で、民間企業の法定雇用率は2.5%です。2026年7月からは2.7%へ引き上げ予定です。対象事業主の範囲も広がるため、人事担当者は早めに採用計画と職場整備を進める必要があります。
現場で必要になる配慮の具体例は、障害者雇用における合理的配慮の具体例で整理しています。
障害者雇用の基本的な進め方
障害者雇用を進めるときは、採用人数だけでなく、職務設計、配慮、配属先、入社後の定着支援まで一連の流れで考える必要があります。
- 法定雇用率と現在の雇用状況を確認する
- 社内で任せられる職務を洗い出す
- 配属先の上司と受け入れ条件を整理する
- 求人票に仕事内容と配慮相談の範囲を書く
- 面接で必要な配慮と業務要件をすり合わせる
- 入社後の面談、支援機関連携、配慮見直しを行う
採用してから考えるのでは遅く、入社前に業務、上司、相談窓口を決めておくことが定着率に関わります。
法定雇用率の確認
民間企業の法定雇用率は、2026年5月11日時点では2.5%です。2026年7月から2.7%へ引き上げ予定です。制度は変更されることがあるため、厚生労働省やハローワークの最新情報を確認してください。
法定雇用率を満たすことは重要ですが、人数だけを追う採用は長続きしません。採用後に任せる職務、配慮、評価方法まで設計する必要があります。
職務の切り出し
障害者雇用で失敗しやすいのは、職務が曖昧なまま採用するケースです。「何か事務を任せる」「現場でできることを探す」という状態では、本人も配属先も困ります。
まずは部署ごとに、定型業務、入力業務、確認作業、資料作成、軽作業、社内サポート業務などを洗い出します。そのうえで、必要なスキル、勤務時間、配慮の可能性を整理しましょう。
採用前に準備すべきこと
採用前に現場とすり合わせること
障害者雇用は人事だけで完結しません。配属先の上司が仕事内容、配慮、相談方法を理解していなければ、入社後に本人も現場も困ります。
- 担当業務の範囲
- 業務指示の出し方
- 通院や体調不良時の連絡方法
- 配慮情報の共有範囲
- 面談の頻度
- 評価と契約更新の基準
これらを採用前に整理しておくことで、雇用率のための採用ではなく、定着を前提にした採用になります。
採用前に現場と合意しておくこと
採用前には、担当業務、業務指示の方法、通院時の扱い、相談先、配慮情報の共有範囲、評価基準を現場とすり合わせます。これを曖昧にしたまま採用すると、入社後に本人と現場の双方が困ります。
特に重要なのは、配慮を誰が管理し、いつ見直すかです。入社時の配慮だけでなく、3か月後、6か月後に見直す前提で運用すると、定着支援につながります。
合理的配慮と求人票の作り方
合理的配慮の考え方
合理的配慮は、障害のある労働者が能力を発揮するための調整です。募集・採用時だけでなく、採用後も必要になります。
配慮の例には、勤務時間の調整、通院配慮、業務指示の明確化、作業環境の調整、支援機器の導入、定期面談などがあります。重要なのは、本人と話し合い、業務上必要な配慮に落とし込むことです。
求人票で書くべきこと
求人票には、仕事内容を具体的に書きます。障害者歓迎という表現だけでは不十分です。担当業務、必要なスキル、配属部署、勤務時間、通院配慮の相談可否、面談体制などを明確にしましょう。
曖昧な求人票は応募者の不安を高めます。仕事内容が明確な求人ほど、応募者も自分に合うか判断しやすくなります。
面接と入社後の定着支援
面接で確認すべきこと
面接では、障害名だけで判断せず、業務上必要な配慮を確認します。本人ができること、苦手なこと、安定して働くための工夫、通院頻度、情報共有の範囲を整理しましょう。
配慮できることと難しいことは、入社前に率直に伝えることが大切です。曖昧に採用すると、入社後に本人と現場の双方が困ることになります。
応募者側が面接で確認したい内容は、障害者雇用の面接で聞かれる質問と答え方にもまとめています。採用側の質問設計にも活用できます。
面談で確認したい項目
- 業務量は適切か
- 配慮は機能しているか
- 上司に相談できているか
- 体調や通院に変化はあるか
- 担当業務を広げられる余地はあるか
面談は問題が起きたときだけ行うものではありません。定期的に確認することで、小さな不調や認識違いを早めに修正できます。
入社後の定着支援まで設計する場合は、障害者雇用で働き続けるための相談先と配慮見直しも確認しておくと、面談や相談導線を作りやすくなります。
助成金と外部相談先
障害者雇用では、職場環境整備や雇用管理に関する助成金が用意されている場合があります。制度は変更されるため、厚生労働省、JEED、ハローワークの最新情報を確認してください。
外部相談先としては、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などがあります。採用前から連携しておくと、入社後のトラブル対応がしやすくなります。
避けたい運用と定着しない採用の共通点
避けたい運用
避けたいのは、障害者雇用を雇用率の不足を埋める採用として扱うことです。職務が曖昧なまま採用すると、本人も現場も困ります。
また、配慮情報の共有範囲を本人に確認しないまま現場へ伝えることも避けるべきです。個人情報と安全配慮のバランスを取りながら、必要最小限の共有を行いましょう。
定着しない採用の共通点
定着しない採用では、職務が曖昧、現場任せ、配慮の見直しがない、評価基準が不明確といった問題が起きがちです。採用時点では問題が見えなくても、入社後に本人の不安や現場の負担が大きくなります。
人事担当者は、採用人数だけでなく、入社後3か月、6か月、1年の状態を想定して設計する必要があります。
この記事で特に重視したい結論
人事担当者が障害者雇用を進めるときは、採用人数だけを目標にしないことが重要です。法定雇用率への対応は必要ですが、職務設計、合理的配慮、配属先の理解、入社後の面談がなければ定着しません。
障害者雇用は人事だけで完結しません。配属先の上司、同僚、産業医、支援機関と連携し、本人が能力を発揮できる業務と環境を整える必要があります。
採用前に業務と配慮を整理し、入社後に定期面談と配慮見直しを行うことが、結果的に本人と現場の双方を守る運用につながります。
参考にした公的情報
この記事では、厚生労働省の令和7年障害者雇用状況、法定雇用率、合理的配慮指針を参考にしています。民間企業の法定雇用率は2026年5月時点で2.5%、2026年7月から2.7%へ引き上げ予定です。
まとめ
障害者雇用を進めるには、法定雇用率、職務設計、合理的配慮、配属先の理解、入社後の定着支援をセットで考える必要があります。
採用人数だけを追うのではなく、本人が能力を発揮でき、現場も受け入れやすい仕組みを作ることが、人事担当者に求められます。
特に重要なのは、採用前に職務と配慮を整理し、入社後も面談で状況を確認することです。障害者雇用を一度きりの採用活動ではなく、継続的な雇用管理として設計しましょう。
FAQ
2027年の民間企業の法定雇用率は何%ですか
2026年7月から2.7%に引き上げ予定です。
合理的配慮はどこまで対応すべきですか
本人の申し出を踏まえ、業務上必要な配慮を話し合います。過重な負担となる場合は、代替案を含めて検討します。
初めて障害者雇用を進める場合の相談先はどこですか
ハローワーク、地域障害者職業センター、JEED、障害者就業・生活支援センターなどが相談先になります。