
就労継続支援A型事業所について、「最近閉鎖が増えている」「A型は今後なくなるのではないか」「今通っている事業所は大丈夫なのか」と不安に感じている人もいると思います。
特に令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定以降、A型事業所を取り巻く環境は大きく変わりました。さらに令和7年には、厚生労働省の集計として、2024年度の障害者解雇者数が9,312人、そのうち就労継続支援A型事業所の利用者が7,292人だったことが示されています。
そして令和8年現在は、単にA型事業所の報酬改定だけでなく、障害者雇用率制度や障害者雇用の「質」をどう考えるかという制度全体の見直し議論も進んでいます。
結論からいうと、A型事業所そのものがすぐになくなるわけではありません。ただし、今後は「最低賃金を払えるだけの仕事を確保できているか」「福祉サービス費に頼りすぎていないか」「利用者のスキル向上や一般就労につながる支援ができているか」が、これまで以上に問われる時代になります。
この記事でわかること
- A型事業所は今後どうなるのか
- なぜA型事業所の閉鎖や解雇が増えたのか
- 令和6年度報酬改定で何が変わったのか
- 令和8年時点で進んでいる制度見直しのポイント
- 利用者が今のうちに確認しておきたいこと
A型事業所は今後どうなるのか
A型事業所は、今後「なくなる」というよりも、事業所ごとの選別が進んでいく可能性が高いです。A型事業所は、障害のある人と雇用契約を結び、最低賃金以上の賃金を支払いながら、働く場と支援を提供する制度です。
そのため、一般企業でいきなり働くのが難しい人、体調に波がある人、短時間から働きたい人、支援を受けながら働く経験を積みたい人にとって、A型事業所は今後も必要な選択肢です。
一方で、A型事業所は福祉サービスであると同時に、雇用契約を結ぶ「働く場」でもあります。利用者に最低賃金を支払う以上、事業所側には安定した仕事の確保、売上の確保、支援体制の整備が求められます。
令和8年現在の流れを見ると、今後残りやすいA型事業所は、単に利用者を受け入れるだけの事業所ではありません。地域企業との連携、施設外就労、一般就労への移行支援、利用者のスキル向上、安定した生産活動を持つ事業所が評価されやすくなっていくと考えられます。
令和8年時点で注目すべき最新動向
令和8年時点でA型事業所を考えるうえで重要なのは、令和6年度報酬改定の影響がまだ続いていることです。令和6年度の改定では、就労継続支援A型の基本報酬に関わるスコア方式が見直されました。
特に重要なのが、生産活動収支の評価です。簡単にいうと、事業所が利用者に支払う賃金を、事業活動による収益でどれだけ支えられているかが重視されるようになりました。
また、経営改善計画の作成状況や、利用者の知識・能力向上に向けた支援の取組状況も評価に関わるようになっています。つまり、A型事業所は「仕事を用意しているだけ」ではなく、「きちんと稼げる仕事があるか」「利用者の成長につながる支援があるか」まで見られる方向に進んでいます。
2024年度の大量解雇が大きな転換点になった
厚生労働省の資料では、令和6年度にハローワークが解雇届により把握した障害者の解雇者数は9,312人で、そのうち就労継続支援A型事業所の利用者だった人は7,292人とされています。
この数字は、A型事業所の問題が一部の地域や一部の事業者だけの話ではなく、制度全体の課題として見直される段階に入ったことを示しています。
もちろん、すべてのA型事業所が危ないわけではありません。安定した受注先があり、利用者に合った仕事を用意し、支援体制も整っている事業所はあります。ただし、赤字運営が続いていたり、低単価の作業に頼っていたり、利用者のスキルアップにつながりにくい事業所は、今後さらに厳しくなる可能性があります。
令和8年は障害者雇用制度全体の見直しも進んでいる
令和8年には、厚生労働省が「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を公表しています。この研究会では、障害者雇用の質の向上、障害者雇用率制度、就労継続支援A型事業所やその利用者の位置付けなどが検討テーマに含まれています。
ここで大事なのは、A型事業所の問題が「福祉サービスの報酬改定」だけではなく、「障害者雇用の質」や「雇用率制度のあり方」とつながって議論されていることです。
今後は、障害者雇用率を満たすためだけの形式的な雇用や、福祉サービス費に依存した働く場ではなく、本人が安心して働き続けられるか、キャリアやスキルにつながるか、一般就労や地域での働き方につながるかが、より重視されていくと考えられます。
なぜA型事業所の閉鎖や解雇が増えたのか
A型事業所の閉鎖や解雇が増えた理由は、ひとつではありません。令和6年度報酬改定の影響、最低賃金の上昇、物価高、人件費の増加、受託作業の単価の低さ、運営ノウハウ不足など、複数の要因が重なっています。
特にA型事業所は、B型事業所と違って利用者と雇用契約を結びます。そのため、利用者に最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。これは利用者にとって大きなメリットですが、事業所側から見ると、安定した売上がなければ運営が難しくなるということでもあります。
理由1:最低賃金を支えるだけの仕事が必要
A型事業所では、利用者が働いた時間に応じて最低賃金以上の賃金を支払います。そのため、事業所には継続的に仕事を確保し、売上を作る力が求められます。
しかし、実際には低単価の軽作業や内職的な作業に頼っている事業所もあります。こうした仕事は利用者にとって取り組みやすい一方で、十分な収益を出すのが難しい場合があります。
最低賃金が上がり、物価や人件費も上がる中で、作業単価が低いままだと、事業所の収支は悪化しやすくなります。その結果、事業縮小や閉鎖、利用者の解雇につながるケースが出てきます。
理由2:福祉サービス費に頼りすぎる運営が難しくなった
A型事業所は福祉サービスとして報酬を受け取りますが、本来、利用者に支払う賃金は生産活動による収益から支払うことが原則です。
つまり、福祉サービス費だけに頼って利用者の賃金を支えるような運営は、制度の趣旨から見ても問題になりやすいです。令和6年度報酬改定では、この点がより厳しく見られるようになりました。
今後は、事業所がどのような仕事で売上を作っているのか、利用者に支払う賃金を生産活動でどれだけ支えられているのかが、ますます重要になります。
理由3:一般就労やスキル向上につながらない事業所が見直されている
A型事業所は、単に作業をする場所ではありません。利用者が働きながら生活リズムを整え、仕事の経験を積み、必要に応じて一般就労や次の働き方につなげていく役割もあります。
しかし、長く通っていても仕事内容がほとんど変わらない、スキルが身につかない、一般就労に向けた相談がない、事業所の中だけで完結してしまう場合、利用者の将来につながりにくくなります。
令和8年現在の制度見直しの流れでは、障害者雇用の「質」が重要なテーマになっています。これはA型事業所にも関係します。今後は、ただ働く場を提供するだけでなく、本人の希望や体調に合わせて、次の選択肢を一緒に考えられる事業所が求められるでしょう。
今後残りやすいA型事業所の特徴
今後も安定して残りやすいA型事業所には、いくつかの特徴があります。利用者から見ても、事業所を選ぶときは、雰囲気だけでなく運営の安定性や支援内容を見ることが大切です。
安定した仕事や取引先がある
まず大切なのは、安定した仕事や取引先があるかどうかです。企業からの受託業務、施設外就労、地域との連携、自社商品の販売など、収益源が複数ある事業所は比較的安定しやすいです。
反対に、単価の低い作業だけに頼っていたり、特定の取引先だけに依存していたりする場合は、その仕事がなくなったときに運営が不安定になる可能性があります。
利用者のスキルアップを考えている
今後のA型事業所では、利用者のスキルアップ支援も重要です。パソコン作業、清掃、接客、事務補助、軽作業、農作業、食品加工、デザイン、データ入力など、作業内容は事業所によって異なります。
大切なのは、その作業が本人の将来にどうつながるかです。毎日同じ作業をするだけでなく、できることが増える仕組みがあるか、本人の希望を聞いてくれるか、一般就労を目指す人への支援があるかを確認しましょう。
体調や障害特性への配慮がある
A型事業所を利用する人の中には、体調に波がある人、通院が必要な人、長時間勤務が難しい人、人間関係に不安がある人もいます。
そのため、欠勤や早退への対応、通院への配慮、作業量の調整、相談しやすい雰囲気、支援員との相性はとても重要です。売上や仕事量だけを重視しすぎて、利用者の体調に合わない働き方になってしまうと、長く続けることが難しくなります。
閉鎖や移行が必要な場合の説明が丁寧
残念ながら、今後も一部のA型事業所では閉鎖や事業縮小が起こる可能性があります。そのときに重要なのは、利用者への説明と移行支援です。
突然「来月で閉鎖します」と言われるのではなく、今後の見通し、他のA型事業所への移行、B型事業所への移行、就労移行支援、一般就労、失業保険の手続きなどを丁寧に案内してくれるかが大切です。
利用者が今のうちに確認しておきたいこと
今A型事業所を利用している人、これからA型事業所を探す人は、不安になりすぎる必要はありません。ただし、何も確認しないまま通い続けるよりも、今のうちに自分の選択肢を整理しておくことが大切です。
今の事業所の仕事は安定しているか
まず確認したいのは、今の事業所の仕事が安定しているかです。作業が急になくなることが多い、待機時間が多い、利用者が減っている、職員の入れ替わりが激しい、説明が少ない場合は、少し注意して見ておいたほうがよいです。
直接聞きにくい場合でも、「最近仕事量は安定していますか」「今後もこの作業は続きそうですか」「もし仕事が減った場合はどうなりますか」といった聞き方なら確認しやすいです。
自分はA型が合っているのかを見直す
A型事業所は、最低賃金をもらいながら支援を受けて働ける制度です。そのため、ある程度働く力があり、雇用契約のもとで働きたい人に向いています。
一方で、体調がまだ安定していない人、毎日通うのが難しい人、まずは生活リズムを整えたい人は、B型事業所や自立訓練、就労移行支援のほうが合う場合もあります。
逆に、A型で安定して働けている人は、一般就労や障害者雇用へのステップアップを考えるタイミングかもしれません。A型に通い続けることが悪いわけではありませんが、自分の希望に合っているかを定期的に見直すことは大切です。
閉鎖に備えて相談先を持っておく
A型事業所の閉鎖が不安な場合は、事業所だけに相談先を限定しないほうが安心です。ハローワーク、相談支援専門員、自治体の障害福祉窓口、障害者就業・生活支援センター、主治医、家族など、複数の相談先を持っておくと、いざというときに動きやすくなります。
特に、A型事業所が閉鎖する場合、他のA型事業所に移るのか、B型に移るのか、一般就労を目指すのか、就労移行支援を使うのかで必要な手続きが変わります。早めに相談しておくことで、急な変化にも対応しやすくなります。
A型・B型・就労移行支援の違いも確認しておこう
A型事業所の今後を考えるときは、A型だけを見るのではなく、B型事業所や就労移行支援との違いも理解しておくと安心です。
| 支援の種類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結び、最低賃金以上で働く | 支援を受けながら働きたい人、一定の勤務ができる人 |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約を結ばず、工賃を受け取りながら作業する | 体調に波がある人、短時間や軽い作業から始めたい人 |
| 就労移行支援 | 一般就労を目指して訓練や就職活動支援を受ける | 障害者雇用や一般企業への就職を目指したい人 |
A型が合う人もいれば、B型のほうが安心して通える人もいます。すぐに一般就労を目指したい人は、就労移行支援や障害者向け転職エージェントの利用が合う場合もあります。
これからA型事業所を選ぶときのチェックポイント
これからA型事業所を探す場合は、見学のときに次のポイントを確認しておくとよいです。
- どのような仕事をしているか
- 仕事量は安定しているか
- 施設外就労や企業との取引があるか
- 体調不良時の対応はどうなっているか
- 通院への配慮はあるか
- 利用者のスキルアップ支援はあるか
- 一般就労への移行実績や支援はあるか
- 職員に相談しやすい雰囲気か
- 閉鎖や事業変更があった場合の説明体制はあるか
見学では、良いところだけでなく、不安な点も確認しましょう。A型事業所は毎日通う場所になることが多いため、仕事内容だけでなく、人間関係、職員の対応、休みやすさ、相談しやすさも重要です。
まとめ:A型事業所はなくならないが、質と安定性が問われる時代へ
A型事業所は、今後すぐになくなる制度ではありません。支援を受けながら雇用契約で働ける場として、A型事業所を必要としている人は多くいます。
ただし、令和8年現在の流れを見ると、A型事業所は大きな転換期にあります。令和6年度報酬改定によって、生産活動収支や経営改善、利用者のスキル向上がより重視されるようになりました。さらに、2024年度にはA型事業所利用者の大量解雇が明らかになり、障害者雇用制度全体の中でA型事業所の位置付けも議論されています。
これからのA型事業所は、「ただ通える場所」ではなく、「安心して働ける」「仕事が安定している」「本人の将来につながる」ことがより重要になります。
利用者側も、不安になりすぎる必要はありませんが、今の事業所が自分に合っているか、仕事は安定しているか、他の選択肢はあるかを確認しておくことが大切です。A型、B型、就労移行支援、障害者雇用など、自分の体調と希望に合った働き方を選んでいきましょう。
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