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障害者福祉サービスの倒産が過去最多33件|A型・B型の閉鎖に備える確認事項

障害のある人の就労や生活を支える障害者福祉サービスで、倒産が増えています。

東京商工リサーチ TSRデータインサイトが2026年7月21日に公表した調査によると、2026年上半期(1月から6月)に発生した「障害者福祉サービス」の倒産は33件でした。前年同期より26.9%増加し、2012年以降の上半期として過去最多を更新しています。

A型事業所やB型事業所、就労移行支援などを利用している人にとって、事業所の閉鎖は単に通う場所が変わるだけの問題ではありません。仕事や工賃、支援員との関係、生活リズム、一般就労へ向けた計画を同時に失う可能性があります。

ただし、「33件すべてがA型・B型事業所の倒産」という意味ではありません。今回の調査の対象範囲を正しく理解したうえで、利用中の人が確認できること、突然閉鎖した場合の相談先、賃金や工賃の扱いを整理します。

この記事でわかること

  • 障害者福祉サービスの倒産が33件となった背景
  • 倒産件数を見るときの注意点
  • A型・B型・就労移行支援で異なる影響
  • 利用中の事業所で確認したい7つのポイント
  • 事業所が突然閉鎖した場合の相談先
  • A型利用者や職員の賃金が未払いになった場合の対応

障害者福祉サービスの倒産が過去最多の33件に

東京商工リサーチ TSRデータインサイトによると、2026年上半期の障害者福祉サービスの倒産は33件で、前年同期の26件から7件増加しました。2023年上半期の10件から3年連続で増加し、2012年以降の15年間で最多となっています。

調査項目2026年上半期の結果
倒産件数33件
前年同期比26.9%増
負債総額284億4,200万円
資本金1,000万円未満27件・全体の81.8%
破産30件・全体の90.9%
コンプライアンス違反を一因とする倒産6件

負債総額が大きく増えた理由には、絆ホールディングスとグループ会社の大型倒産が含まれています。そのため、「全国の小規模事業所が一斉に巨額の負債を抱えた」と考えるのは正確ではありません。

一方で、倒産した事業者の8割以上が資本金1,000万円未満であり、小規模な事業者を中心に経営が厳しくなっている傾向は見逃せません。

33件はA型・B型だけの倒産件数ではない

今回の調査は、日本標準産業分類の「障害者福祉事業」に該当する、負債1,000万円以上の倒産を集計したものです。就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援だけを分けて集計した数字ではありません。

また、負債1,000万円未満の倒産、法人を清算せずに事業所だけを閉鎖したケース、休止、廃業、指定辞退などが、すべてこの33件に含まれているわけでもありません。

実際に利用者が経験する「突然通えなくなった事業所」の数は、倒産件数だけでは把握できない点に注意が必要です。

なぜ障害者福祉サービスの経営が厳しくなっているのか

障害者福祉サービスの経営難には、ひとつではなく複数の要因があります。東京商工リサーチは、人手不足、人件費の上昇、水道光熱費などの物価高、事業所増加による利用者獲得競争、報酬改定の影響などを挙げています。

人件費や光熱費などの負担が増えている

障害福祉サービスでは、生活支援員、職業指導員、サービス管理責任者などの職員配置が必要です。人材を確保できなければ、必要な支援体制を維持できません。

最低賃金や職員の賃金、社会保険料、水道光熱費、家賃、送迎車両の維持費などが上昇する一方で、障害福祉サービスの収入は公的な報酬制度に大きく左右されます。一般企業のように、費用が増えたからといって自由にサービス価格を引き上げることはできません。

事業所の増加で利用者獲得競争が起きている

障害福祉サービスの事業所が増えること自体は、利用者の選択肢が広がるというメリットがあります。しかし、地域の利用希望者数を大きく上回って事業所が増えれば、定員を満たせない事業所も出てきます。

利用者数が安定しなければ、事業所へ支払われる障害福祉サービス報酬も安定しません。特に開設直後の事業所や、特定の取引先だけに仕事を依存しているA型・B型事業所は、利用者や仕事が減ったときの影響を受けやすくなります。

不正受給や人員基準違反による指定取消しもある

経営難とは別に、不正な報酬請求、人員配置基準の違反、虚偽報告などを理由に、自治体から指定取消しや指定停止などの行政処分を受ける事業所もあります。

「倒産」と「指定取消し」は同じものではありません。倒産は法人の資金繰りや債務に関する問題であり、指定取消しは障害福祉サービスを提供する資格に関する行政処分です。ただし、報酬の返還や指定取消しが経営悪化につながり、結果として倒産する場合があります。

A型・B型・就労移行支援では閉鎖時の影響が異なる

同じ就労系障害福祉サービスでも、A型、B型、就労移行支援では利用者の立場が異なります。特に重要なのが、雇用契約の有無です。

サービス雇用契約受け取るお金閉鎖時に主に確認すること
就労継続支援A型原則あり賃金・給与解雇、未払賃金、離職票、雇用保険、次の就職先
就労継続支援B型なし工賃未払工賃、別事業所への変更、受給者証、生活リズム
就労移行支援なし原則として賃金なし訓練記録、応募状況、支援計画、就職活動の引き継ぎ

A型とB型の制度上の違いは、就労継続支援A型とB型の違いでも詳しく解説しています。

A型利用者は労働者としての確認も必要

就労継続支援A型では、原則として利用者と事業所が雇用契約を結びます。福祉サービスの利用者であると同時に、事業所に雇用されている労働者でもあります。

事業所が閉鎖するときは、最終出勤日だけでなく、解雇日、最終給与の支払日、未払いの残業代、離職票、源泉徴収票、雇用保険の手続きなどを確認してください。

給与が支払われないまま事業所が倒産した場合、一定の条件を満たせば「未払賃金立替払制度」を利用できる可能性があります。厚生労働省によると、この制度は倒産によって賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、未払賃金の一部を立て替えるものです。

具体的な対象要件は倒産の状況や退職時期によって異なるため、事業所の説明だけで判断せず、厚生労働省の未払賃金立替払制度を確認し、最寄りの労働基準監督署へ相談してください。

B型利用者の工賃は賃金とは仕組みが異なる

就労継続支援B型では、事業所と雇用契約を結ばず、福祉サービスの利用者として生産活動に参加します。受け取るお金は給与ではなく工賃です。

未払賃金立替払制度は労働者の未払賃金を対象とする制度であり、B型の工賃とは仕組みが異なります。工賃が支払われない場合は、事業所の運営法人、破産管財人などの連絡先、市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員へ確認する必要があります。

B型の仕組みや工賃については、就労継続支援B型とは?A型との違い・向いている人も参考にしてください。

就労移行支援では就職活動の引き継ぎが重要

就労移行支援が閉鎖する場合、賃金よりも、これまで進めてきた訓練や就職活動をどう引き継ぐかが重要です。

応募中の企業、作成済みの履歴書・職務経歴書、障害特性や合理的配慮を整理した資料、個別支援計画、訓練記録、実習先との連絡状況などを確認しましょう。次の事業所が決まっても、情報が引き継がれなければ就職活動を最初からやり直すことになりかねません。

利用中のA型・B型事業所で確認したい7つのこと

事業所の経営状態を利用者が正確に把握することは簡単ではありません。ただし、日頃の変化から確認できることはあります。

次の項目がひとつ当てはまっただけで、すぐに倒産すると決めつけるべきではありません。複数の変化が続いている、質問しても説明がない、支払いの遅れが繰り返されている場合に、外部の相談先を確保しておくためのチェック項目として考えてください。

1.給与や工賃の支払日が遅れていないか

A型の給与やB型の工賃が、決められた日に支払われているか確認しましょう。振込日が突然変更された、現金払いへ変更された、支払額の説明がないといった場合は、理由を確認してください。

一度の事務処理ミスだけで経営難とは判断できません。しかし、支払いの遅れが繰り返される場合は、給与明細、工賃明細、通帳の入金記録、出勤記録を残しておくことが大切です。

2.仕事や作業量が急に減っていないか

A型・B型では、生産活動による売上が賃金や工賃の原資に関係します。以前は毎日あった作業がなくなった、待機時間が増えた、主要な取引先との仕事が終了したといった変化がある場合は、今後の仕事量を確認してみましょう。

「最近、仕事量が減っていますが今後の予定はありますか」「別の作業へ変更する予定はありますか」と聞けば、経営状態を直接質問しなくても状況を確認できます。

3.職員の退職が急増していないか

生活支援員や職業指導員が短期間に何人も退職している場合、残った職員の負担が増え、支援の質が低下する可能性があります。

職員の退職理由は家庭事情や転職などさまざまであり、退職があっただけで経営難とは限りません。ただし、補充されないまま支援員が減り続けている、質問しても担当者が決まっていない場合は注意が必要です。

4.サービス管理責任者が頻繁に交代していないか

サービス管理責任者は、個別支援計画の作成や支援内容の管理を担う重要な職種です。交代そのものは珍しくありませんが、短期間に何度も交代する、後任が決まらない、個別支援計画の面談が行われない場合は、運営体制について確認したほうがよいでしょう。

5.重要な変更について説明があるか

営業時間、通所日数、作業内容、送迎、昼食、工賃の計算方法などが変わる場合、利用者への説明が必要です。

突然ルールが変わる、質問しても回答がない、職員によって説明が違う場合は、変更内容を書面やメールで確認してください。閉鎖が迫った事業所では情報が混乱することもあるため、口頭説明だけに頼らないことが重要です。

6.行政処分や指定取消しが公表されていないか

障害福祉サービス事業者への行政処分は、都道府県、政令指定都市、中核市などの公式サイトで公表されることがあります。

検索するときは、「都道府県名または市名+障害福祉サービス+行政処分」「事業所名+指定取消し」などの言葉を使います。ただし、改善指導や調査中の情報がすべて公開されるとは限りません。

全国の指定事業所については、厚生労働省が案内する障害福祉サービス等情報公表制度から検索できます。

7.閉鎖時の連絡先と次の選択肢が決まっているか

現在の事業所だけを相談先にしていると、その事業所と連絡が取れなくなったときに動けなくなります。

市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員、相談支援事業所、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターなど、事業所以外の連絡先をスマートフォンや手帳に保存しておきましょう。

A型事業所の今後や閉鎖への備えについては、A型事業所はこれからどうなる?制度見直しと閉鎖増加の背景でも解説しています。

通っている事業所が突然閉鎖したときの対応

突然「明日から来なくてよい」「今月で閉鎖する」と伝えられると、混乱して何から確認すればよいかわからなくなることがあります。まずは、閉鎖の理由を追及することより、自分の生活と支援を止めないための情報を確保してください。

事業所から書面を受け取る

閉鎖日、最終利用日、運営法人の連絡先、賃金・工賃の支払予定、雇用契約の終了日、利用契約の終了日、書類の受取方法を確認します。

口頭だけで説明された場合は、メールや書面での案内を求めましょう。受け取った通知、メール、給与明細、工賃明細、雇用契約書、利用契約書は削除せず保管してください。

市区町村の障害福祉窓口へ連絡する

A型・B型・就労移行支援を利用するには、市区町村による支給決定や障害福祉サービス受給者証が関係します。別の事業所へ移る場合、サービス等利用計画の変更や受給者証の手続きが必要になることがあります。

「利用している事業所が閉鎖すると言われた」「事業所と連絡が取れない」と伝え、次の事業所を探す方法と必要な手続きを確認してください。

相談支援専門員へ引き継ぎを依頼する

相談支援専門員がいる場合は、できるだけ早く連絡してください。別事業所の空き状況、見学、体験利用、サービス等利用計画の変更などを相談できます。

セルフプランで利用しており相談支援専門員がいない場合は、市区町村へ相談支援事業所を紹介してもらえるか確認しましょう。

A型利用者と職員は労働基準監督署・ハローワークにも相談する

A型利用者や事業所職員に未払賃金、突然の解雇、離職票の未交付などの問題がある場合は、労働基準監督署やハローワークへの相談も必要です。

雇用契約書、労働条件通知書、給与明細、出勤記録、シフト表、銀行口座の入金記録、解雇や閉鎖を伝えるメールなどを準備すると、状況を説明しやすくなります。

生活リズムを維持する予定を作る

事業所へ通えなくなると、収入や支援だけでなく、起床時間、外出、人との交流まで失われることがあります。次の事業所が決まるまで時間がかかる場合は、主治医や家族、相談支援専門員と相談し、無理のない生活予定を作りましょう。

図書館へ行く、短時間散歩する、決まった時間に起きる、週に一度は相談機関へ連絡するなど、小さな予定でも生活リズムの維持につながります。

閉鎖をきっかけに次の働き方を考える選択肢もある

事業所が閉鎖したからといって、すぐに一般就労へ進まなければならないわけではありません。別のA型・B型へ移ることも、就労移行支援を利用することもできます。

一方で、A型で安定して働けていた人や、B型で通所日数が増えている人は、一般就労や障害者雇用を検討するタイミングになる場合もあります。

  • 別のA型・B型事業所へ移る
  • 就労移行支援で一般就労を目指す
  • 就労選択支援を利用して適性や希望を整理する
  • ハローワークで障害者求人を探す
  • 障害者向け転職サービスへ相談する
  • 体調を整えるため、一時的に利用を休む

現在の体調や働ける時間に合う選択肢は、障害者の就労支援ガイドで整理しています。

一般企業への就職を検討できる状態であれば、障害者向け転職サービス・エージェントも情報収集の選択肢になります。ただし、閉鎖直後に焦って就職先を決めるのではなく、必要な配慮や勤務時間を整理してから進めましょう。

障害者福祉サービスの倒産に関するよくある質問

33件すべてがA型・B型事業所の倒産ですか?

いいえ。東京商工リサーチの調査は、負債1,000万円以上の「障害者福祉事業」を対象にした集計です。A型・B型・就労移行支援だけを分けた倒産件数ではありません。また、負債1,000万円未満の倒産や事業所単位の休廃止など、集計に含まれない閉鎖もあります。

A型事業所が倒産したら給与はもらえますか?

事業所に支払能力がなければ、給与がすぐに支払われない可能性があります。一定の条件を満たす場合は未払賃金立替払制度を利用できる可能性があるため、労働基準監督署へ相談してください。

B型事業所が閉鎖したら未払工賃はどうなりますか?

B型の工賃は雇用契約に基づく賃金とは異なります。事業所の運営法人や破産管財人などの連絡先を確認し、市区町村の障害福祉窓口や相談支援専門員にも相談してください。

事業所と突然連絡が取れなくなった場合はどこへ相談しますか?

最初に、市区町村の障害福祉窓口へ連絡してください。相談支援専門員がいる場合は、同時に連絡します。A型の給与や職員の賃金が未払いの場合は、労働基準監督署にも相談しましょう。

事業所の行政処分を調べる方法はありますか?

都道府県、政令指定都市、中核市などの公式サイトで、指定取消しや指定停止が公表されることがあります。「地域名+障害福祉サービス+行政処分」「事業所名+指定取消し」で検索してください。指定事業所の基本情報は、障害福祉サービス等情報公表制度でも確認できます。

まとめ:不安を感じたら事業所以外の相談先を確保しておこう

2026年上半期の障害者福祉サービスの倒産は33件となり、2012年以降の上半期として最多を更新しました。人件費や物価の上昇、事業所間の競争、報酬改定、不正受給など、事業者によって経営悪化の理由は異なります。

ただし、職員が退職した、作業が減ったというひとつの情報だけで、事業所が倒産すると決めつけることはできません。大切なのは、給与や工賃の支払い、仕事量、職員体制、説明状況を冷静に確認し、事業所以外の相談先を持っておくことです。

市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどの連絡先を、問題が起きる前に確認しておきましょう。

A型利用者や職員の場合は、雇用契約書、給与明細、出勤記録を保管しておくことも重要です。事業所が突然閉鎖しても、相談先と必要な書類がわかっていれば、次の支援や仕事へ進みやすくなります。

参考情報

-障害者雇用ニュース