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障害者雇用は人事だけの仕事ではない?D&I for Bizが提案する支援とは

障害者雇用というと、人事部が求人を出し、面接を行い、採用後の相談にも対応するものだと思われがちです。

しかし、実際に障害のある社員へ仕事を教え、毎日の体調や業務状況を確認するのは、配属先の上司や同僚です。人事が丁寧に採用を進めても、受け入れる現場に情報や仕組みがなければ、合理的配慮が実施されなかったり、本人が職場で孤立したりする可能性があります。

株式会社D&Iは2026年7月2日、大規模な障害者雇用に取り組む企業向けの法人サービスサイト「D&I for Biz」を開設しました。同サービスが掲げているのは、「障害者雇用を人事だけで抱えない」という考え方です。

この記事では、D&I for Bizが提供する採用・定着・戦力化支援を紹介しながら、企業が現場全体で障害者雇用を支えるために必要な仕組みと、求職者が応募先を選ぶときに確認したいポイントを解説します。

この記事でわかること

  • D&I for Bizが提供する障害者雇用支援
  • 障害者雇用を人事だけで進めることが難しい理由
  • 人事・上司・同僚・支援機関の役割分担
  • 合理的配慮を現場で実施するための仕組み
  • 求職者が求人票や面接で確認したいポイント

D&I for Bizとは

D&I for Bizは、障害者雇用に取り組む企業に対し、採用から入社後の定着、業務設計、社内へのノウハウ定着までを支援する法人向けサービスです。

株式会社D&Iの発表によると、大企業の障害者雇用では、毎年必要になる採用人数の確保、配属先の理解、マネジメント負担、取り組みの属人化といった課題が生じやすいとされています。

法定雇用率を達成するために採用人数だけを増やしても、入社後の仕事や相談体制が用意されていなければ、安定した雇用にはつながりません。そのためD&I for Bizでは、障害者雇用を「採用」という一点ではなく、採用・定着・戦力化を含む長期的な仕組みとして設計する考え方を示しています。

公式サイトでは、3か年計画の視点から障害者雇用全体を設計し、企業の組織や人事部門のリソースに合わせて支援すると説明されています。

運営する株式会社D&Iとは

株式会社D&Iは、障害者の人材紹介、在宅雇用支援、定着支援、障害者雇用コンサルティング、就労移行支援などを展開する企業です。

D&I for Bizの公式サイトでは、サービス導入企業は延べ4,000社以上、身体障害・精神障害・知的障害のある人への対応実績は延べ1,000名以上と公表されています。これらは株式会社D&Iが公表している実績であり、サービスを比較するときは、自社と同じ業種や雇用規模の支援事例があるかも確認することが大切です。

障害者雇用を人事だけで進めることが難しい理由

障害者採用の窓口は、人事部に置かれることが一般的です。しかし、入社後の雇用管理まで人事だけで担当することには限界があります。

障害のある社員が毎日働く場所は人事部ではなく、配属された部署です。仕事内容を決め、指示を出し、成果を確認し、体調が悪そうなときに声をかけるのも、基本的には配属先の上司や周囲の社員になります。

人事だけが障害特性や合理的配慮を理解していても、その内容が現場で実行されなければ意味がありません。

採用後の仕事内容は現場が用意する

障害者雇用で起こりやすい問題の一つが、「採用したものの任せる仕事がない」という状態です。

人事部が採用目標を立てても、各部署にどのような業務があり、誰が指導できるのかまでは、人事だけでは把握しきれません。実際に仕事を切り出すには、配属先の管理職や担当者が日々の業務を整理する必要があります。

たとえば、単に「事務補助を任せる」と決めるだけでは不十分です。

  • どの書類を扱うのか
  • 1日にどの程度の件数を処理するのか
  • 判断が必要な場合は誰に確認するのか
  • 電話対応や来客対応を含むのか
  • 作業が終わった後に次の仕事を誰が指示するのか
  • どのような基準で仕事を評価するのか

こうした内容まで整理されていなければ、本人は何をすればよいかわからず、上司側も指示の負担を感じやすくなります。

障害者雇用の基本的な進め方については、「人事担当者向け 障害者雇用の進め方」でも詳しく解説しています。

合理的配慮は日常の業務の中で行われる

合理的配慮は、人事担当者との定期面談だけで完結するものではありません。

たとえば、口頭指示を文書でも残す、業務の優先順位を明確にする、通院日に勤務時間を調整する、休憩を取りやすくするといった配慮は、日常の業務運営の中で実施されます。

厚生労働省は、雇用分野では、事業主に対して過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供することを義務付けています。また、具体的な配慮は障害名だけで一律に決めるのではなく、本人と会社が話し合って決めることが基本です。

そのため、人事が本人から配慮事項を聞き取った後は、本人の意向を確認したうえで、実施に必要な内容を配属先へ共有する必要があります。

合理的配慮の種類や伝え方については、「障害者雇用における合理的配慮の具体例」も参考にしてください。

人事が相談窓口を一人で抱えると属人化しやすい

障害者雇用の担当者が一人しかいない企業では、採用、面談、体調相談、配属先との調整、支援機関との連絡まで、すべて一人に集中することがあります。

担当者が異動や退職をすると、配慮の経緯や本人との約束が引き継がれず、支援体制が急に機能しなくなる危険があります。また、本人にとっても、相談できる相手が一人しかいない状態は安心とはいえません。

障害者雇用を継続するには、担当者個人の経験や善意ではなく、記録、相談ルート、面談方法、情報共有の範囲を仕組みとして残すことが必要です。

D&I for Bizが提案する3つの支援

D&I for Bizでは、企業向けの支援を大きく「採用支援」「定着支援」「戦力化支援」の3つに分けています。

採用支援

採用支援として紹介されているのは、人材紹介、採用代行、面接時の見極め、テレワーク型採用などです。

障害者採用では、応募者の障害名だけで判断するのではなく、業務経験、得意なこと、苦手な環境、必要な配慮、体調管理の方法などを確認する必要があります。

一方で、面接で障害や病歴について必要以上に詳しく聞けばよいわけではありません。企業が確認すべきなのは、採用後の仕事に関係する範囲です。

採用支援を外部へ依頼する場合も、最終的には企業自身が次の点を明確にする必要があります。

  • 実際に任せる仕事内容
  • 必要な能力や経験
  • 対応できる合理的配慮
  • 配属先と指導担当者
  • 勤務時間や在宅勤務の可否
  • 入社後の相談体制

求人票が曖昧なままでは、採用代行を利用して応募者を集めても、入社後のミスマッチにつながります。

定着支援

D&I for Bizの定着支援には、体調・メンタルヘルス管理、定期面談や相談窓口の代行、ジョブコーチ、リワーク・復職支援などが挙げられています。

障害者雇用では、入社時に決めた配慮が、ずっと同じ内容で機能するとは限りません。仕事内容、上司、勤務場所、体調が変われば、必要な配慮も変わる可能性があります。

定期面談では、単に「体調は大丈夫ですか」と聞くだけでなく、具体的な業務場面を確認することが重要です。

  • 指示内容を理解できているか
  • 仕事量が多すぎたり少なすぎたりしないか
  • 困ったときに上司へ質問できているか
  • 周囲とのコミュニケーションで困っていないか
  • 現在の配慮が実際に実施されているか
  • 本人が希望する仕事や成長の方向性はあるか

本人が人事には相談できても、直属の上司には話しにくい場合があります。反対に、現場の上司が対応に悩み、人事へ相談できずに問題を抱えることもあります。

本人、人事、配属先、必要に応じて外部支援者が話し合える仕組みをつくることが、定着支援では重要です。

就職後に利用できる福祉サービスについては、「就労定着支援とは?就職後に困ったときの相談先と使い方」で解説しています。

戦力化支援

D&I for Bizでは、障害者雇用の全体設計、教育研修、eラーニング、業務の切り出し、社内へのノウハウ定着などを「戦力化支援」として紹介しています。

障害者雇用における戦力化とは、合理的配慮をなくして一般社員とまったく同じ働き方を求めることではありません。

本人の得意なことと企業の業務を結び付け、必要な配慮を行いながら、担当業務や役割を明確にすることが基本です。

たとえば、正確性が高い人にデータ確認を任せる、集中力を生かせる作業環境を用意する、仕事を段階的に増やす、作業手順を標準化するといった方法が考えられます。

業務を細かく整理する取り組みは、障害のある社員だけでなく、新入社員、外国人社員、短時間勤務者などにとっても仕事を理解しやすくする効果があります。

障害者雇用を採用人数だけで評価せず、配置や育成まで考える動きについては、「障害者雇用は『採用』から『配置・育成』へ。STARSが目指す新しい支援とは?」でも紹介しています。

障害者雇用を現場全体で支えるための役割分担

「現場全体で支える」といっても、すべての社員が障害の詳しい情報を知る必要はありません。大切なのは、それぞれの立場で必要な役割を決めることです。

担当主な役割
経営層障害者雇用の方針を示し、必要な人員・予算・時間を確保する
人事担当者採用、配慮の調整、相談窓口、制度整備、支援機関との連携を行う
配属先の管理職仕事内容、業務量、指示方法、評価基準を調整する
指導担当者日常的な業務指示、質問への対応、進捗確認を行う
産業保健スタッフ健康面や就業上の措置について専門的な助言を行う
外部支援機関本人と企業の間に入り、職場適応や配慮の調整を支援する

重要なのは、問題が起きたときに「人事へ連絡してください」で終わらせないことです。日常の業務上の問題は上司、配慮の変更は人事、健康面は産業保健スタッフというように、相談内容に応じたルートを決めておく必要があります。

配慮情報は必要な範囲に限定する

現場の協力を得るために、本人の診断名や病歴を職場全体へ共有する必要はありません。

共有する内容は、本人の意向を確認し、仕事を進めるために必要な範囲へ限定します。

たとえば、上司や指導担当者には「指示は口頭だけでなくチャットにも残す」「月に1回通院のため勤務を調整する」と共有すればよく、詳しい治療内容まで伝える必要はない場合があります。

厚生労働省の合理的配慮に関する資料でも、職場内へ説明する内容や対象者の範囲について、本人と十分に打ち合わせることが重要だとされています。

障害を伝えることへの不安については、「精神障害・発達障害を職場で開示できない理由とは?調査で見えた合理的配慮の壁」も参考になります。

外部サービスへ任せれば企業の責任がなくなるわけではない

D&I for Bizのような外部サービスを利用すれば、人事や現場の負担を軽減し、専門的な助言を受けることができます。

ただし、障害者雇用をすべて外部へ任せることはできません。合理的配慮を提供し、実際の職場環境を整える主体は、雇用する企業です。

外部の相談窓口が本人の話を聞いても、配属先の上司が業務量を調整しなければ問題は解決しません。研修を実施しても、管理職が内容を日常のマネジメントに反映しなければ、現場は変わりません。

外部支援は、企業の責任を置き換えるものではなく、企業が自社の仕組みをつくるために利用するものと考える必要があります。

求職者が応募前・面接で確認したいポイント

「障害者雇用に力を入れている」「定着支援があります」と求人票に書かれていても、実際の支援内容は企業によって異なります。

求職者側は、人事担当者が親切かどうかだけでなく、配属先を含めた受け入れ体制を確認することが重要です。

配属予定の部署と仕事内容が決まっているか

仕事内容が「事務補助」「軽作業全般」などとしか書かれていない場合は、具体的な業務を質問しましょう。

  • 配属予定の部署は決まっていますか
  • 1日の主な仕事内容を教えてください
  • 電話対応や接客対応は含まれますか
  • 仕事の指示は誰から受けますか
  • 入社後に仕事が変更される可能性はありますか

採用後に仕事を探す前提の会社よりも、担当業務と指導者がある程度決まっている会社のほうが、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

合理的配慮が現場へ共有されるか

面接で配慮を伝えても、その内容が配属先へ共有されなければ実施されません。

「面接で相談した配慮は、配属先の上司へどのように共有されますか」「入社前に上司と配慮内容を確認する機会はありますか」と聞いてみると、会社の運用が見えやすくなります。

面接で合理的配慮を伝える方法については、「障害者雇用の面接で聞かれる質問と答え方」も確認してください。

入社後の相談先が複数あるか

直属の上司との関係で困っているとき、相談先がその上司しかなければ問題を伝えにくくなります。

人事担当者、別の管理職、産業医、外部相談窓口など、複数の相談ルートがあるかを確認しましょう。

定期面談がある場合は、実施頻度だけでなく、「誰が面談するのか」「面談内容がどの範囲で共有されるのか」も重要です。

配慮を入社後に見直せるか

合理的配慮は、入社時に一度決めて終わりではありません。

実際に働き始めると、想定していなかった負担が見つかることがあります。反対に、仕事に慣れることで、当初必要だった配慮が不要になる場合もあります。

面接では、「入社後に配慮内容を見直すことはできますか」「体調や業務が変わった場合は誰へ相談できますか」と確認しておくと安心です。

雇用率だけで会社を判断しない

2026年7月から、民間企業の法定雇用率は2.7%へ引き上げられました。障害者雇用の求人が増える可能性がある一方、これまで障害者を雇用した経験が少ない企業も新たに採用へ動くことが考えられます。

法定雇用率を達成しているかは重要な情報ですが、それだけで働きやすさは判断できません。

仕事内容、現場の理解、合理的配慮、相談体制、評価、キャリア形成まで確認する必要があります。

企業の見極め方は、「障害者雇用の“良い会社”とは?これからは雇用率だけでは評価されない」でも詳しく解説しています。

D&I for Bizの取り組みから見える今後の障害者雇用

D&I for Bizの「人事がすべて抱えなくていい」という考え方は、単に人事の仕事を外部へ移すという意味ではありません。

障害者雇用を一部の担当者だけの仕事にせず、経営層、人事、配属先、産業保健スタッフ、外部支援機関がそれぞれの役割を持つことが重要だという提案です。

これまでの障害者雇用では、「何人採用したか」「法定雇用率を達成したか」が注目されがちでした。しかし、採用人数だけを増やしても、配属先に仕事や支援体制がなければ、本人も現場も疲弊してしまいます。

今後は、次のような点が企業に求められるでしょう。

  • 採用前に仕事内容と配属先を決める
  • 本人と合理的配慮を具体的に話し合う
  • 本人の同意を得て必要な情報を現場へ共有する
  • 上司や指導担当者にも相談先を用意する
  • 配慮や仕事内容を定期的に見直す
  • 特定の人事担当者に依存しない仕組みをつくる
  • 雇用人数だけでなく定着、成長、仕事内容も評価する

障害者雇用は、人事部が採用して終わる仕事ではありません。実際に働く現場を含め、組織全体で継続的に改善していく取り組みです。

まとめ

D&I for Bizは、障害者雇用を人事だけで抱えるのではなく、採用、定着、戦力化を一連の仕組みとして整える支援を提供しています。

人事部には採用や制度設計の役割がありますが、実際の仕事内容、日々の指示、合理的配慮の実施には、配属先の上司や同僚の協力が欠かせません。

企業側は、外部サービスを活用しながらも、自社の中に役割分担と相談体制を残すことが重要です。

求職者側も、人事担当者の対応だけで判断せず、仕事内容、配属先、配慮の共有方法、入社後の相談先まで確認しましょう。

障害者雇用の質は、「採用してもらえるか」だけでなく、「入社後に現場で安心して働き続けられるか」で判断する必要があります。

FAQ

障害者雇用は人事部だけで担当できないのでしょうか

採用手続きや制度管理は人事部が中心になりますが、仕事内容の設定、日々の指示、合理的配慮の実施には配属先の協力が必要です。人事部だけで完結させるのではなく、現場との役割分担を決めることが重要です。

D&I for Bizはどのような支援を提供していますか

公式サイトでは、人材紹介や採用代行などの採用支援、定期面談や相談窓口などの定着支援、研修や業務切り出しなどの戦力化支援を紹介しています。企業の課題や規模に応じて支援内容は異なるため、詳しい条件は公式サイトで確認してください。

外部の定着支援サービスがあれば社内の相談窓口は不要ですか

外部相談窓口があっても、社内で業務や配慮を調整する担当者は必要です。外部支援者は助言や面談を行えますが、仕事内容や職場環境を実際に変更できるのは雇用する企業です。

合理的配慮は配属先の全員に共有されますか

必ずしも全員へ共有する必要はありません。本人の意向を確認し、配慮を実施するために必要な人へ、必要な内容だけを共有することが基本です。診断名や詳しい病歴まで広く伝える必要はない場合があります。

求職者は面接で何を確認すればよいですか

具体的な仕事内容、配属先、指導担当者、合理的配慮の共有方法、定期面談、入社後の相談窓口を確認しましょう。「配慮できます」と言われた場合も、誰がどのように実施するのかまで質問することが大切です。


参考情報

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